2005年4月15日金曜日

娘の疑問

こどもって面白いなぁと思う事があった。この春新一年生になった娘は、毎日張り切って学校へ行っている。まだまだ「勉強」らしきものが始まっているとは思えない。お遊びに毛が生えた程度の事をやっているらしい。しかし、彼女自身の自覚が大きく変わったと感じる。楽しいながらもちょっとした緊張感を感じるのだ。

たぶん、親の「これからはいろいろな事を身につけてくれ」という思いが伝わっているのだろう。
それまでの保育園は「親の都合で行ってもらっている」という感じだったが、小学校は違う。ちょっと具合が悪くても、「本人の為に出来るだけ行った方がいい。」と思ってしまう。その気迫が伝わるのか、入学式直後に、38度近い熱を出したが、薬の助けを借りながらも、根性で欠席せずに登校して行った。翌日には学童保育へも行ったのだから、精神的には格段の進歩である。この事に娘ながらもちょっと見直したりした。

そんな中、先日夕飯の食卓で「ああ、一生懸命考えたんだなぁ」と思う事を言った。

彼女は小さい時から動物が好きで、NHKの「世界不思議大自然」がお気に入りである。毎回、身じろぎもせず食い入る様に観ている。そしてこの夕飯の時、ふと思い出したように、随分前に観た「海ガメ」の話をし始めた。「どうして、お母さんガメは水の中で卵を産まないんだ」と訊くのである。

もう少し背景を説明すると、ご存知の通り、海ガメは産卵の為に海から上がって、浜辺に卵を産みつける。涙を流しながら卵を産んで大事に砂をかぶせた後、また海へと戻って行く。月満ちてふ化が始まった時、よちよちと歩いて海に入ろうとする赤ちゃんガメを、水鳥達が格好の餌とばかりに、次々と狙って食べて行く。

娘はこの光景がとてもショックだったらしい。折角生まれたのに、すぐに食べる水鳥が憎らしく、彼女なりに考えた。「お母さんガメは海から上がってまた海に戻って行く、赤ちゃんガメも生まれたらすぐに海を目指す。。どちらも海で生きているのなら、わざわざ浜辺で卵を産んで鳥に食べられる危険を冒す必要は無いではないか。。」そして、先の質問の言葉が出たのである。

私は母親として少なからず感動した。その番組は片手間にしか観て居なかったが、「なぜ浜辺に卵を生まなければならないのか」という非常にプリミティブな疑問に対して、明確に答えて居なかったように思う。この疑問を解くには、

  • 生き物には様々な分類がある事
  • 分類によってその生命の誕生と生きる術が違う事
  • 生命のリレーには時に「リスク」を取らなければならない事
というような、生物学の基礎をまず学ばなければならない。彼女は、自ら抱いた疑問に対し、その答えを得る為に、これらの知識を一つづつこれから獲得して行くのである。

私の気持ちは「海ガメのお母さん」だ。

彼女は、もうよちよちと、知識の海へと歩き始めている。ありがたい事に、人間のお母さんは、このよちよち歩く子どもを見守るに十分な「時間」を天から与えられている。そう思ったら何だかこちらも「襟を正さなければ」という気持ちがした。

良質な映像ソースは、こんな風に、子どもの目を開いてくれる。改めて感じ入った出来事だった。

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